前回、ローンを完済した後は、すぐに抵当権抹消の登記をした方がいいというお話を書きました(「ローン完済後の抵当権抹消登記」)。その中で、古い担保権がついていた場合について少し触れましたが、将来の相続に備えてご自分の不動産の登記簿を調べたりする中で、古い担保権がついていて困っている、というご相談を受けることがあります。
実際に登記簿を確認すると、大正時代や明治時代に設定された、抵当権や賃借権などの古い担保権が残っていることがあります。
将来、もし売却をするときや銀行から融資を受けるときなど、その状態では売ることも融資を受けることも難しいため、担保権を消すことを検討しなければなりません。
消す方法の検討手順(※ここでは、抵当権者が自然人の場合の(根)抵当権についての検討)としては、
1.契約書などが残っている場合、契約書の内容を確認する。
→例えば抵当権者が死亡・解散した場合は抵当権が消滅するなどの特約があれば、それにより、単独で抹消の手続きができることがあります。
2.抵当権者の所在について確認する。
→抵当権者の所在がわかっているか、所在不明かでとるべき手続きが変わってきます。抵当権者の所在不明とは、抵当権者の生死や現在どこにいるかわからないことをいいます。抵当権者が死亡したことはわかっているが、その相続関係が不明な場合も含まれます。また、相続人が数名いる場合において、その一部の者だけが所在不明であるときも含まれます。
抵当権の抹消手続きは、基本的に、抵当権者と設定者(土地の所有者)が共同でする必要があります。
抵当権者がわかっていて、手続きに協力してもらうことができれば、問題なく抵当権を消す手続きができます。
ただ、明治、大正、昭和初期などにつけられた古いものであれば、抵当権者がすでに亡くなっていることもよくあります。
そうなると相続人を探し出して登記手続きに協力してもらう必要がありますが、古ければ古いほど相続人の人数も増え、相続人を特定する作業も大変です。また、相続人がわかっても、行方や生死が不明な人がいることもよくあります。
そういうこともあり、現実的には、土地の所有者が単独で抵当権を消す手続きを取らざるをえないことが多いです。
そこで、所有権者が単独で抵当権を抹消する方法として、以下の4つの方法について検討することになります。
- 債務や利息など全額を完済したことが証明できる書類を提出する方法
- 債権(利息や遅延損害金も含む)全額を供託する方法
- 裁判所に公示催告を申し立てて除権決定を求める方法
- 裁判所に提訴をする方法
①については、当時の借用証書や弁済証書が残っていることはほぼないため、現実的にはほぼ利用されません。
③についても、抵当権者の権利が消滅していることの証明が必要であったり、所有者が時効の援用を事前にする必要があるなど、手間や時間が大変かかるため、裁判に比べてのメリットはほとんどないでしょう。
④の裁判は、協力してくれる相続人以外の相続人全員を相手に提訴する必要があり、費用も時間もかかります。
結果として、②の全額を供託する方法により、抵当権を抹消する手続きを選択することが多い印象です。
ただこの方法も、抵当権者や相続人について所在調査をしっかりすることを求められるため、簡単な手続きではありません。
先祖代々受け継いできた土地などで、ずっと何らの手続きもしていなかった場合などは、終活手続きの一環として、ご自分の所有している不動産の登記簿を確認してみてはいかがでしょうか。
担保権がついていることがわかったら、なるべく早めに専門家に相談することをおすすめします。
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